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ネコティアスの時事コラム
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2011年04月28日
ネコティアス |
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原発事故による集団・広範囲被ばくの被災者救済方策 −FUKUSHIMA 3・11− |
■責めを負うべきもの達■
- 政府と官僚と事業者が責めを負うべきであるのは当然であるがそれらに加え、原発立地地域の自治体および住民と日本国民の全てにも非はある。
- 原発立地地域の当該自治体および住民は一方的にだまされたのであろうか? 決してそういう事ではないはずだ。
原発稼働までの間にその危険性を理解するだけの情報が全くなかったわけではないであろうし、誘致によってもたらされる経済的メリットのために危険性に目をつぶった事もあったはずだ。
そもそも原発を推進したい政府と官僚と事業者の説明をうのみにすること自体がおかしいのである。
推進者が都合のいい情報しか出さないのは自明である。
- そして国民全体も「他人事」として多少の事故が起こっても自分たちに影響しないと考えたのではないだろうか。
- マスコミの責めは大きい、常に事実を掘り下げず原則を持たない行き当たりばったり報道がこの国に与えてきた悪影響は原発の報道だけではない。
■責めを負うべきもの達のすべきこと■
- 政府と官僚と事業者は、
[1] 情報を全て公開すること、
[2] その結果として長期間は人間が住む事を控えるべき地域を明確にする、
[3] その上で住居の移転と勤務場所の移転を同時に行う事のできる救済策を発表し住民と企業に十分に説明する。
政府と官僚と事業者は(それにマスコミも)、「風評被害」などという言葉使いを即座に止めるべきである。
「大丈夫だ」と言い続けるもの達に対して『自分はそうは思わない』という人々の真実の思いを<風評被害>として押し殺そうというのはなんという姑息な事であろうか。
情報を全て公開すれば国民がそれぞれに考えるだけである。
それとも国民がそれぞれに判断することを恐れるほどに日本は封建社会なのであろうか?
- 当該自治体および住民は自身にも責任の一端があることをまず認識しなくてはならない。
現在のように全て政府と官僚と事業者が悪いと言うのは正しくない。
いかなる状況であれ民主的な手続きで稼働に賛成票を入れたわけであるのだ。
その際の事業者の安全対策や説明について不作為な部分があったなどと言っても、事業者だけの説明で満足した事の責任は当該自治体および住民にある。
その反省に立てば復興努力とともに今後の市民としての行動規範も明らかになるであろう。
現在稼働中の原発についてもより一層の安全策を実施するように国と事業者にお願いしても効果は少ない。
むしろ安全対策は住民が専門家を雇うことで行いそのコストを国と事業者に転嫁するといった方法を編み出さなくては同じことの繰り返しとなるであろう。
そして最も大事なことは個人個人が対応するのではなく、一枚岩になることは多大な努力を要するにしても集団で対応しなくてはならないという事である。
もし個々での対応を選んでしまえば遅からず忘れ去られてしまい正統な補償は得られないであろう。
- 国民全体についても「義援金」を払えばそれで達成感と自己満足を感じることでは何も解決しない。
義援金など出さずとも最終的に国民全体が負担することにかわりはなく、それよりも政府と官僚と事業者に対して素早い行動を促すために圧力をかける事の方が何倍も当該自治体および住民を援助することになる。
そして今後の原発のあり方に対して真摯に議論していくべきである。
それをせずに義援金を寄付し、あとは誰かがやるだろうという思考パターンは政府と事業者の思うつぼであろう。
- マスコミは「日本人は助け合おう」、「義援金を募集」、「政府に透明性と説明責任を問おう」、「普通の生活をして景気を良くすることが被災者を救うのだ」等々プロパガンダを垂れ流すが、隠された情報を自ら発掘し報道するという姿勢はみじんも見られない。
専門家・評論家とみずから命名した人物の意見を検証もなく流す行為は国民を欺くものである。
マスコミにはそもそも欺くという意思さえもなく何も考えていないだけかもしれない。
今すべきことは原発についての過去と今後の方向性を真摯に検証して報道することである。
政府と事業者を糾弾しているつもりで実際には知らずして彼らの手先になっていることを良しとするのはもう終わりにしてもらいたい。
■具体的な復興策の為の前提■
- 最初に被災者を、
(a) 地震と津波による被災者、
(b) 放射能による被災者、
(c) その両方による被災者、
という3つに分けて考える必要がある。
なぜならば(a)は国が援助すべきであるし、(b)は東京電力と国が補償すべきであるし、(c)は国の援助と補償および東京電力の補償があるべきである。
現在はこの(a)、(b)、(c)がごちゃ混ぜになっているのであるからして、公正な援助と補償は期待できない。
東電はまずは仮払いの一律100万円などと言っているが、いったいどの被災者にどの部分を支払うのであろうか?
着の身着のままに避難してきた被災者に住民票の写しと銀行預金口座番号を付けて申請しろなどと上段に構えるやり方の企業が本当に、できる限りの補償をしよう、と考えているのであろうか?
国と事業者はこの3分類もせず東電にどの部分を補償させようというのか?
今のままでは地震と津波が起こった責任も東電にあるかのようである。
ましてや他の電力事業者にも分担させようなどという考えは、「今後も他の事業者で同じような事故が起こるであろうから、その時のために皆で分担する方法を考えておこう」という気持ちから出たのではないかと勘繰られる事になる。
またここで重要なことは、(b)の被災者については、日本の全国民のみならず諸外国もその範疇に入るという事である。
この部分の補償は金銭的なものを放棄している被災者が大部分であると考えるのが合理的であるが、国や事業者の説明責任や現在稼働中の原発や今後の原発に対する方針の再度の考察や見直しなどの行動を要請する権利までを放棄しているわけではないことだ。
つまり国や東電は「済みませんでした」と言葉で言うだけで済まされるわけではない。
「今後考えていきます」と言うだけであるならば、一旦放棄した損害賠償を全ての被災者が請求することになろう。
- カテゴリー分けをした後は、(a)についてはこれまでの震災と同様にできるだけ生活していた場所の住まいと仕事場の復旧をすることになる。
(b)については医療の提供や補償金の支払いが必要であるならば生活圏の代替地の提供などとなる。
(c)については国による地震と津波の被害に対する援助と被ばくの程度による医療提供や補償金の支払いおよび生活圏の代替地の提供ということになる。
つまり(a)に対しては国が援助し、(b)については東電が補償し、(c)については国と東電で援助と補償を行う、ということになろう。
- ここで最も考慮されるべきグループは、被ばくによりこれまでの生活圏をそのまま他所に移動しなくてはならない人びとである。
この人びとを救済するための第一段階は地域の指定である。
国は独自の判断で速やかにそのような指定を発表すると同時に生活圏の移転に対する100%の援助を行う事である。
現在国が指定しているような「当分の間」などという曖昧な表現では将来に大きな禍根を残す。
そしてその資金についても国と東電で分担するのであるが、一旦国が全額を立替るという形で行うわなくてはならない。
もちろん国が立て替えた、東電が支払うべき金額は、国より東電に請求する事になる。
■生活圏の移転を伴う復興策■
- 生活圏の移転とは何か?
要は住宅・仕事場・学校・病院などの全てをどこかに新たに創造すると言う事である。
住宅だけ提供しても人は生きてはいけない。
仮に近隣の学校・病院などのインフラを利用するにしても住民が生活していけるだけの最低限の仕事場の創造を伴う事は絶対に必要である。
- 被災地のこのグループの住人は生まれ故郷を離れることに抵抗はあるはずであるが、皆がそれぞれ思い思いに生活を始めれば、集団としての力を失い、国と東電より見捨てられることになることを強く意識して団結しなくてはいけない。
その意味では役場も同時に移転するほうが良い。
- ただし自治体・集落の住民であっても農業者や漁業者や工場労働者などの全てが納得のいく移転先を探すことは不可能に近いであろうことは容易に想像がつく。
そのためには業業者・農業者などのグループを再編成して移転することも考えなくてはならない。
- 補償者はまず移転先の自治体と合意をする。 その後にすべきことは住宅の造成である。
- 次に行う事は被災地に存在した企業を中心に移転先に新たに工場などを建設する企業を誘致する事である。
その際に税金面を含む補助を企業に投資する必要もあろう。
決して被災地に存在した企業にこれを不幸中の幸いとしてこの際労働コストの安い外国に移転することを自由にさせてはならない。
- 事故原発の周囲で住民が集団移転したことにより残された場所は政府援助分(東電補償分ではない)の対価として国有地とし、一定期間経過後に居住地域に復活した際には払い下げにより国が資金を回収できる可能性は残す。
- また漁場についても、国有の自然保護区域と規定し、自然が回復した時点で、元の漁業者に対しては優先的に漁業権を払い下げる。
- なお、事故原発の周囲数キロについてはその残骸を後世までそのまま残し、国民全てが忘れ得ぬ場所にすべきである。
新たな都市を作り、すべてを水に流すことは、全てを忘れ去り、反省を将来に残さない不作意と心すべきである。
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以 上 |
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