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ネコティアスの時事コラム

2008年11月01日

ネコティアス
操作された世界的景気大後退 ― 景気回復は極めて早い
 

仮説


 2007年初頭に米国においてサブプライムローンの焦げ付きが顕著になると、このことが米国金融機関全般に大きな衝撃を与える可能性がささやきはじめられることとなった。 当初は「全米の住宅ローンの中のサブプライムだけの問題であり、巨大な金融システムの中で十分に対処可能なことである」とされていた。  しかし2008年夏までにはサブプライムローンを組み込んだ証券化商品に利用されたCDSによる金融保証が極めて大きくかつEUの金融機関を巻き込んだ形で保有されている事実が判明していき、同時に金融機関の借り入れコストが上昇していったことにより保有資産の逆ザヤが発生し日々損失が膨らむ状態に陥った。

 この間、世界市場ではBRICsが好調を持続し、農産物や原油などの商品相場の高騰がおこっていた。  また中国・アラブ富裕諸国に代表されるSWFが結果としては政治的意図を持っていると懸念されうる投資を進めていた。 特に原油の高騰においては中国・ロシアのみならずイラン・ベネズエラなどの収入をも急増しそれら反米諸国の国力を増大させていった。 皮肉にも米国の金融機関が拠出することにより始まったヘッジファンドの投資行動が米国の国益に反する結果を出していることになってしまった。

 2008年初頭には、米国の金融機関の膿みを出し再生に向け大手術をしなくてはならないことが米国で覚悟されることになった。  しかしながら米国が単純に事を起こせば何が起こると想像されるか?  たぶん以下のスパイラルに陥る危険性を排除できないことになる。


米国発金融危機 ⇒ 信用収縮 ⇒ 世界同時株安 ⇒ 各国独自の自国金融システムの保護 ⇒ 世界不協調 ⇒ 安全保障の均衡の崩壊(印パ、イスラエル、パレスチナ、ロシアと旧ソビエト圏諸国、中国とチベット、 そして反米イスラム過激派の反撃等々の紛争の激化)⇒ 米国の敗退 ⇒ ドルの大暴落 ⇒ BRICsの台頭 ⇒ 米国・欧州の価値観からみると混沌および世界の終焉

 その危険性を除くためにはそれぞれの「米国にとって好ましくない芽を摘んでおくこと」が必要になる。  ただし時間が限られているため、米国独自に芽を摘む余裕はなく主要国との連携のもとに行うことが必須となった。  その方策は 第一は金融システムにおいては各国当局が一斉に同じ対応を行うこと。中身は大手金融機関への公的資金の注入、銀行間取引の政府保証を含む銀行への中央銀行からの直接融資、時価会計制度の弾力的な運用でありそして最も重要なことはその方策を各国当局が円滑に行えるようにするための「世界同時恐慌への恐怖感の植え付け」であった。  第二は安全保障においてロシアと中国とイスラエルに対し金融危機の間にことを起こさないことを確約させる、また北朝鮮については金正日の健康が悪化するまで時間を稼ぎ行動を起こさせないようにすることであった。  このシナリオライターにとっては2つの意味でタイムスケジュールは慎重に予定されていた。  つまり今回の危機はその前に中国がチベットにそしてロシアがグルジアに制裁を行った後でまた中国にとっては北京オリンピックの後である必要があり且つ米国大統領にサル回しのサルが座っている間でなくてはならなかった。  そして「世界同時恐慌への恐怖感の植え付け」が独り歩きして本当の恐慌がくる前には終息させることが重要であり、そのための時間は3か月以内に手術室から病室に移すということであった。  シナリオライターグループにグリーンスパン、ポールソン、バーナンキなどが含まれるのは明白であり、英国、フランス、ロシア、中国、インドが予め同意していたことも自明である。  インドに対してこの危機の間に米国が原子力開発への援助を発表したことは取引が事前に成立していた証拠であろう。 日本についは何か起こることを知らされていた程度であった。

 ベアスターンズがスタートのベルであり、リーマンブラザーズは米国大手金融のためのシナリオであることを目くらます生贄であった。  その後に起こった各国の見事なまでの短期間の協調は事前のシナリオなくしては起こり得なかった。  またイスラム原理主義過激派のテロの活発化以外に混乱に乗じた地政学的リスクの増大が見られないことも事前の合意がなされていない限り極めて不思議な現象である。


 以上の仮説に基づくと現在の状況は次の様になる。


  1. 今回の資産売却は適正価格の見極めのためではなく需給のバランス点まで短時間で売却する必要性に起因するものであり、今後緊急に売却されるべき資産は喧伝されているほど多くない。 もし喧伝されているほどの信用収縮がこれからも起こるのであればいくら高い値段といってもCDSに値が付いているはずがない。
  2. 業績の良い企業はできるだけ控え目に発言を控え、業績の悪い企業は経営責任を取ることもなく金融危機の原因にして一気にうみを出そうとしているため駆け込みの業績下方修正は慎重に見極める必要がある。 NECや日産などは今回の危機がなくても早晩危機に直面したはずである。
  3. 植え付けた悪夢が現実を悪化させないように事態の収拾が始まりつつある。 すでにここ数日にはホワイトハウスとベルギー中央銀行総裁が「大恐慌の心配ない」と発言をはじめた。 ウォーレンバフェットは今回も正しいこと(「米国株は買い」)を早めに述べたのである。

 そして、以上の仮説に基づくと今後起こることは次の様になる。


  1.  11月中には「世界各国当局の懸命な努力と英知によって世界恐慌からは救われたようだ」、「BRICsにとっては急激な成長の過程で少し頭を冷やす結果として好ましい出来事であったと考えていいのではないか」「米国は金融の中心に座り続ける」などのトーンがコンセンサスになっていく。
  2. 各国株式市場は10月後半に付けた株価を大底として確認する。
  3. 2009年中にはBRICsは成長路線に回帰し新たなバブルが芽生え、中東におけるバブルは引き続き拡大し続ける。 またアフリカ諸国に新たなバブルの種が植えられる。
  4. 金融機関においては米国ではJPモルガン・チェース、ゴールドマン・サックス、バンカメがリーダーとなり、欧州においてはバークレーズ、HSBCなどがリーダーとなり政府とSWFと大手金融機関が融合する。 日本においては三菱FGが一歩抜きんでる可能性がある。
  5. 比較優位にある日本経済は深い落ち込みはなく低成長を維持する。 ただし根本的に輸出依存を内需型に転換することができないためまたしても絶好の機会をとらえられず長期的には衰退する。 最後に日本が復活する機会がくるとすれば首都圏直下型地震後の復興ということになろう。


以 上
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