ユーロ危機は新たな段階に入ってきた。
つまり各国の「緊縮財政が危機を救う」という現実を見えない官僚が考えた処方箋は全く効力がないばかりか実態をより悪化させる事が判明したために、これまではしり込みをしていたユーロ共同債や財政統合が現実味をおび始めてきた。
つまり危機がこれまで考えてきた以上に深刻であるという事に各国の官僚が理解しだしたということになる。
最近の論調はそもそも財政統合をせずに通貨だけ統合した事のほころびが現れたために、それを繕うためには徐々に財政統合からひいては欧州連邦国家の成立まで必要になるというものだ。
これについてはドイツのメルケル首相までが方針転換したように思われる。
しかしながらもともとマーストリヒトで通貨同盟を始めた時に通過を統合し、罰則規定ももたない財政赤字努力目標を入れただけで将来的にもうまく物事が進むなどと考えていたと推測するほうが非現実的である。
当時の時点で各国首脳と国民に財政も政治も欧州連邦国家として統合するなどと言っても誰ものむはずはなかったであろうし、そのような事をすれば一歩も進まないという事はコール首相をはじめとして当時の首脳ははなから判っていたと考える方がはるかに腑に落ちる。
そしてそれが真実であれば、彼らは「中途半端な通貨統合は早晩破綻して危機に陥り、徐々に欧州連邦国家への道筋が見えていくはずだ」と期待を込めて予想していた(これを第1ステージと考える)、というのが真実に近いのではないか。
そのように考えれば次に何が起こるかはある程度予想できる。
選択肢は2つあるはずだ。
一つは最終目的である連邦国家まで一挙に(と言っても一定の合意を得るだけでも数年はかかるはずである)持っていこうとする場合である。
この場合には現在程度の危機では到底各国支配者とその国民の支持が得られるはずもなく、現状以上の過激な危機が必要となろう。
もう一つは今回はあくまで、共同債券の発行や銀行システムの欧州全域での統合までいけば良いという考え方であろう(これを第2ステージと考える)。
もし現在世界規模で起こっている第二の危機がなければ第2ステージが完了した時点で回復の道が見えるというのが現実的であろう。
しかしながら2番目の危機がユーロ危機をより複雑にしており欧州の思惑通りにいかない可能性がある。
2番目の危機とは世界規模の内需の喪失である。
内需の喪失はなにに起因するかといえば消費者の喪失である。
企業が物をいかに作ろうがそれを購買する中間消費層がいなければデフレに陥るのは自然の摂理である。
そして米国や日本や欧州で起こっていることはまさしくその事である。
大企業家と官僚組織と政治家は中間消費者から搾取は行ってきたが、その消費者を育てることをおろそかにしてしまった。
中間消費者層が縮小すればいかに技術革新をしてもよりよい製品を発売しても全くの無意味となる。
そしてその中間消費者層の減少は世代間格差としてより一層鮮明になっている。
デフレとは中間消費者層の縮小ということになる。
各国とも若年層の失業率は暴動の一歩手前まで来ている。
そして各国の政策は若年層により苦難を与え、高齢者に富を再配分するものになっている。
このような根本的な構造問題を放置した上では、たとえ欧州連邦国家を形成する道筋が付いたとしても、経済回復はありえないのである。
現在の国家の政策立案者はそのすべてが比率の少ない消費者層(高所得層)であるために、本当に必要な改革を行う事はできない。
真の改革は持たざる者たちの真の代弁者が政治的なリーダーになった時にだけ起こるであろう。
その意味では今後より厳しい危機が到来する確率は高いと判断せざるを得ない。
欧州が第2ステージで回復するように見えたとしても2番目の危機が回避された事にはならず、早晩第3の危機が到来することになろう。
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