選挙結果
- 民主党が115議席⇒308議席、自民党が300議席⇒119議席と前回の理不尽な(同じ自民党内部からも反対意見が出た挙句参院で否決されたことに切れ、可決した衆院を解散した)小泉郵政解散総選挙の全く逆の数字となった。
- 前回は小泉チルドレンが90名弱で今回は小沢チルドレン多数で、自民の大物候補者に女性の刺客をぶつけて落とすという手口も前回同様であった。
- 小沢も鳩山ともに元自民党であり自民が自民をたたくということも前回と全く同じ構図となった。
- 改選前と同じ合計9議席を確保した、みんなの党、国民新党、新党大地にしても元自民の政治家である。
- 自民に乗ってきた公明党は自民と共倒れ(31議席⇒21議席)となった。
以上の結果を冷静にみると、日本に極めて新しい動きが出てきたとは言えないことがわかる。
中国と米国の選挙直後のコメントの底には、「政権が変わるといっても所詮は日本人、個別案件で丸めこめない相手とは到底思えない」思いがうかがえた。
韓国のみは「戦後の官僚支配と大企業優遇の政策に日本人が決別した」と大げさに報道したが、そのような事を考えて投票したのではないことは街頭インタビューでの「政権を取った後は民主党に日本を住みやすい国に変えてもらいたい」とか、マスコミの「なぜ自民は大敗したか? 民主党の外交政策は? 民主党は日本をどの方向に向けたいのか?」などという傍観者そのものの質問を聞けば明らかである。
日本人の得意技でまたしても死票を嫌い勝ち馬に乗っただけである。
前回にしても郵政民営化こそが構造改革の本丸だということであったが、そんなことを真剣に考えていた人はほとんどいなかった。
鳩山民主党代表の「国民の皆さまの<"お"暮らし>という演説に対してポピュリストだという批判もあったが、日本においてはポピュリストでなければ多数の支持は得られない。
米国は例によって、日本を誤解(過大評価)しているため、保守からリベラルへの転換とか戦後長く続いた自民独裁体制への決別というのであろうが、上記の結果が示す通り本質は自民党の内部分裂で新たな勝ち組(小沢、鳩山)に国民が乗っただけである。
正確には国民の要求により敏感な派閥が、権力に胡坐をかいていた派閥に大勝利したということである。
そもそも死票を嫌うという事と、勝ち馬に乗るという意味は何であろうか。
個人の意見を明確にするということは多数決で少数意見になる可能性があるわけで、そうするとたとえ自分の意見と異なろうとも多数で決定された事は守らなくてはならないことになる。
多数決本来の意味を理解していないものは、元来権威を尊重しないので、多数決で決まっていようと各個人の意見が異なっていると"分裂"を引き起こす。
そのため事前に多数決で決まりそうな意見が判っている場合は最初の時点からその意見に与する行動に出ることになる。
企業のミーティングや戦時中までの御前会議(あくまで想像だが)や江戸城での御前会議(同様)を想像してみよう。
いくら忌憚のない意見を述べよ、と言われても結果が見えている場合(たいていはボスの意見は事前に判明している)決定される方向と反対の意見を発言するものはいない。
せいぜい、「すでに皆様はお気づきとは思いますが、こうこうこういうポイントもあり、また別の意見もあることから慎重に判断すべきです。」などと意味のない発言をして自身がいかに諸々の点を考慮できるほど頭がいいかをひけらかすことぐらいしかできないのである。
何百年とこのようなミーティングをしてきた(と判断しているのだが)日本人は、別の言い方をすれば、一旦多数決で決まればどれほど自分の意見と異なろうと従うという覚悟のないので、ミーティングで発言などできないのである。
それがもし異文化圏の外国人であれば決定の方向が見えないだけになおさらである。
そしてこのことの裏返しは、自分の意見で会議の方向が決まると知っている場合(大企業のアジアにおける出先の会議はその典型)いくらでも意見が言えるということになる。
幸福実現党に票が入らなかった事を見識と考えることもできるが、単にメディアが恣意的に話題にしないので、少数派として無視を決め込んだと見るほうがより真実に近い。
このような文化的背景は政治家も官僚も同様に持っているわけで、国際舞台において日本人が議論を通じて尊敬を勝ち得つつ、重要な仕事を行っていくことは極めて期待薄と言わざるを得ない。
北朝鮮はこの点を良く研究しているのか、日本が切れる寸前まで脅し続ける(日本の意見を聞かない)ことが日本を黙らせる最善の方法であることを熟知している。
一部政治家の先制攻撃論や核武装論など、覚悟もなくしゃべっていることを見透かされている。
小沢一郎にしても覚悟がないから「国連(大戦の連合戦勝国)主義」のような発言をするわけで、国際関係において変化が起こることはあり得ない。
今後の予測。
- 国家戦略室&官僚のパワーをそぐといっても所詮、公務員を首にして自由に入れ替えることができるよう公務員法を変えない限りは、徐々に中央官僚に丸めこまれることになっていく。 国会が開催され委員会で野党の若手自民議員の反撃が始まれば、ほとんどすべての政府に入る議員(選挙前は100名と宣言していた)は官僚と折り合いをつけることになる。 官僚側は経験の浅い若手を議員に張りつけ、議員は官僚にも話もわかりに国家のことを考えている連中もいると誤解し徐々に頼りだすことになろう。 ただし官僚側も当初は民主党政権と野党自民党の両者とどのようにつきあうかに戸惑うことと、自民党の急速な力の消滅より政治主導に変化したように見受けられる局面は1年程度続くものと推測する。 官僚の復権は民主党が油断する2年目以降となろう。
官僚主導の打破に関しては、「大外枠を破壊しない限りは内部での多少の動揺は起きても、所詮は新たな落ち着きどころに収まるしかない」ということである。
ただ、主義主張がない=フレキシブル、というのは官僚であっても日本人である限り同様であり、民主党が強硬に出ることを継続できれば勝手に体質変化が起こる可能性もある。
- 民主党の政策は確かに大衆迎合的で、外交や大企業再生への道筋はないようにみえるが、現時点での日本の国際関係を除くもっとも大きな課題は人口の減少であることを考えると、優先課題として少子化対策は間違っていない。 景気を長期に再活性化させるには、努力をすればよりよい未来があると若者が考えるようになることだ、そうなれば人口減少に歯止めがかかり教育改革を並行して行えば科学技術立国として復活する可能性も出てくる。 また東アジア連帯構想はその過程で、日本の若年労働者の不足を東アジアの労働力で補えることにもなる。
市場がこの事に期待すれば日系平均株価の戻りは、一時的な戻りではなく、長期上昇トレンドに入る可能性が出てくる。
- 対米関係については、ブッシュ政権を少しアカデミック&国民よりにしただけのオバマ政権と、自民党を少しアカデミック&国民よりにした民主党は類似点が多く、今後3、4年の間に日米関係が悪化する理由はない。 対中関係においても靖国神社への参拝から戦没者慰霊碑中心に切り替えることができれば、中国の対日不満と不安感はかなり取り除くことができるため、今より悪化するという可能性は低い。
- 通常であれば自民党は野党としては国政運営の経験があるだけに、民主党よりも手ごわい野党になるはずであるが、選挙大敗後の老害ゾンビ議員の動きをみると、この場に及んで世の中の動きが理解できない事は明らかで、 急速に解体に向かうであろう。 自民党の議員の中には、与党であるということが自民党から立候補した最大の理由であるという議員が多く存在する。 そのような議員にとってすでに自民党は存在理由を失ってしまったわけで、老害ゾンビ議員がいつまでもしきろうとすれば、若手中心に新党が設立されることになろう。 来年の参議院選挙までにこの新党が政策集団として国民に認知されれば、民主党への重しとして議席を確保する可能性は高い。
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